かわべそうこのCurious Heart 

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同じ82年生まれの女性として part1

韓国で『82年生まれ、キム・ジヨン』100万部突破、日本でも完売店続出という韓国小説では異例の世界的ベストセラーとなっているこの小説は、チョ・ナムジュさんという放送作家の女性が書いたという。

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

わたしは、今まで韓国の小説を1冊も読んだことがなかった、というのが、いかに偏っているかということを痛切に反省するのだが...82年生まれって、わたしと同い年なので、とても興味が湧いた。これまで色んな新聞や雑誌の書評にも取り上げられた本作についての最初の印象は、精神病にかかってしまったキム・ジヨンという日本で言う”さとうひろこ”みたいな女性についての話は、ちょっと堅い韓国社会の読みにくい小説なのかな・・・という先入観のもと、同じ歳の近所の国の女性がどう物語になっているのか、ページをめくってみた。

すると… 

自分に投影してしまうところもあり、韓国で生きるジヨンの方がより酷だと同情したり、とにかく読み終わると怒りと立ち上がれアジアのウーマン!とこぶしを挙げたくなるようなエネルギーが湧いてきた。

実は、ブログを書かなきゃと思わせてくれたきっかけをくれたのもこの小説なのだ。

わたしも、自己主張しなきゃ。自己主張しても良い時代になっているし、それがまだまだ韓国でも日本でも女性が自分のキャリアや人生プランを結婚によって犠牲にして、子どもを産んで母となったら、物分かりのよい黒子になるのが美徳という暗黙の社会的風潮には何かしらの疑問を持っていたのも確かだから。

小説の中には、主婦をしてきた9年間で心の中ではモヤモヤ思っていたけど

口にしなかったようなことを代弁してくれているようなことがたくさん出てきて、ひりひりとした切実感と泣けてきそうな憤りに感情が揺さぶられた。

”子どもを産んだというだけで興味や才能まで制限されたような気持ちになってしまう”(P157)

ジヨンは、娘が生まれて主婦になったが、働きたい、と思っていたのだろう。主婦歓迎のアイスクリーム店のアルバイトに応募するかどうか、というのを目にして、興味をもつ。

でも、大学まで出て、広告代理店でやりがいを感じる仕事を持ち、キャリアウーマンで働いてきたのに、子どもを産んで主婦になったら、その先にあるキャリアは、アイスクリームをすくって販売する店員?コンビニやスーパーのレジ打ち?

そんなプライドがある。でも、そんなプライドを口にしてはいけない、だってその仕事をしている人を馬鹿にしているように思われるから。

子どもが生まれても、そういうところでパートをしようと行動している女性こそまずえらいし、そういう仕事を馬鹿にする自分を恥だと思いなさいよ。

世間、そして一般的な女性たちからもそう言われるだろう。

ジヨンと自分を混合させてしまったけれど、そういうことなのだ。ちょっとだけ、話がそれるけれど『赤毛のアン』シリーズを2年前に読んだ時も、似たようなことを内心思ったのだ。あのモンゴメリが書いた名作「アン」シリーズなのだから、そんなことは口にしてはいけない、と認めたくはなかったが、わたしは確かに思った。「あ、女って、母親になると、つまらない存在になるんだ」って。アンは、空想好きで、小説や詩を新聞に発表したり、学校の教師として、校長まで経験したり、その時のアンは突き進む芯のある女性として描かれてたけれど、6人の子供の母となったアンの物語『炉辺荘のアン』になると、アンというタイトルがつけられているが、子ども達エピソードばかりで、アンは執筆もほとんどしなくなり、だいぶ影が薄い存在になっているのだ。

 

キム・ジヨンを読んでから、改めて、私自身が大学時代に専攻していた「社会学」について再考するようになった。著者のチョ・ナムジュさんも大学で社会学科を卒業されているのもあり、彼女の描いたこの小説は極めて社会学的な要素そのものだとも読み取れる。

女性の社会進出、結婚とキャリア、出産とキャリア、などというのは万国共通のテーマなのだが、『キム・ジヨン』の中に描かれる韓国の現代社会って、日本そのもののようでもあるし、韓国社会って、もっとひどいの??とも思ったり。なんのために、一生懸命勉強して、大学行って、夢を持ったのだろう・・・ほんとにとりわけ真面目に社会に出て生きてきた女性ならなおさらキム・ジヨンのように心がどうにかなってしまうこともあるな、たまたまわたしはそれなりに葛藤しながらもそこまでのストレスを感じないでここまでこれたけど、もしもうちょっと真面目すぎる人間だったら、もしかしたら壊れていたかもしれない。

 

韓国で大ベストセラーになっている本書は、もしかしたら現実に韓国社会を変えるような起爆剤のような一冊になるかもしれない。期待をこめて。