かわべそうこのCurious Heart 

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『満ちみてる生』=Full of Life by ジョン・ファンテ

 

作家・江國香織が、最近出したエッセイで絶賛していたこの本。“満ちみてる”という言葉はどうも覚えにくい、というか正しい日本語なのか、なんてことも気になったのだが、原題の”Full of Life”のほうが、よりシンプルでより正しいタイトルだと感じる。

最初の20頁は正直退屈な出だしなのだけど、読んでいくにつれて、イタリア系アメリカ人の人物の面白さが全開になってゆく。主人公ジョン・ファンテ(著者自身の名前だけど、フィクションだ、と言っている)の妻ジョイスが出産前にカトリックへの改宗に目覚めてゆくところが特に。イタリア移民の父と妻がカトリック教の神父さんを招いて、ジョンと議論してゆくその会話がひたすらにかみ合わないところが、読む側としてはコメディに思えてしょうがない。これが現実的に自分の身内のこととなればこんな気の滅入ることはないのだが。そして、赤ワインを飲みまくる父親の人間性が、まさにイタリア移民といった感じで、異文化体験を満喫できる一冊。

 

最近、邦書が続いていたところにこういう外国文学を読んでみて、なんだか性に合う、と思った。わたしには外国文学が合っているのかな、という答えが出たような気がした。

心地よく、面白い、と感じられる。それは日本人なら芥川賞直木賞受賞作を読むべき、みたいな固定概念から離れ、読みたいと思うものだけを読んでいけば良いのだ。自分が心地よくなれる書物との出会いは自分の貴重な人生のなかの時間の使い方の大切な一つなのだから。

満ちみてる生