カニグスバーグ作品『ティーパーティの謎』からアメリカへの空想の旅に出る
またしても原題と邦題が全く異なるカニグスバーグ作品。
原題は”The View From Saturday”、邦題は『ティーパーティの謎』。
岩波少年文庫のあとがきには、実娘であるローリー・カニグスバーグ氏が母がどうやって物語を思いつくのか、という質問に答えましょうと語る。
このあとがき自体が素晴らしいのだが、この作品は「モーツァルトの交響曲四十番ト短調の第一楽章」を聴いて、“この曲をモデルにして本を書いてみようと思った”というのだ。“この楽章と同じように短い導入部分や主題の繰り返しがある本を書いてみたいわ”というのだからカニグスバーグの天才ぶりに感嘆してしまう。
思春期の子供たち。アメリカという国ではバックグラウンドも家庭環境も異なる子ども達が混在して暮らしている。あとがきにもあるように、“彼らは違いも認めてもらいたいし、友達にも受け入れてもらいたい”。そんな子ども達の内面を時に真面目に時にコメディに描いている彼女の作品は読むたびに、アメリカの日常生活に入り込んだかのような現実逃避ができてわたしはとても好きだ。
その“違いも認めてもらいたいし、自分自身を友達にも受け入れてもらいたい”そういう思いというのは、大人になっても誰にもある。それを見事に表現していてアメリカという国で自分自身のアイデンティティをもがきながらも受け入れ、他人との関わりを通じて友達と心が通ったときの嬉しさ、そういうものがとても愛おしく描かれているのだ。
その友達というのは、たくさんいる必要はない。
ちゃんと、わたしのこと、あなたのことを受け入れてくれる心が通えるヒトというのは存在するのだ。
毎週土曜日(view from Saturday)のインド出身の転校生の男の子ジュリアンが友達3人を招待して始まったティーパーティ。“博学競技大会”への出場。細かい設定までもがワクワクするお話なのだが、忘れちゃいけないのが、この本でわたしは声を出して笑ってしまった以下のシーン。
主人公のひとりナディアという女の子が、ふてくさったときに、テレビでトーク番組を三つ観た。“一つはお母さんが恋人といちゃついて困っているという十代の若者たち。あわれ。もう一つは、ポニーテールを切りたくないと言ったために失業してしまった男性たちについての番組。あわれ。三番めのは、変な場所にピアスを入れている人たちについて。おへそに釘を刺している女の子もいれば、舌にダイヤモンドの鋲をさしている子もいた。一人はおへそを見せ、もう一人は舌をつきだした。不気味。・・・”
Oh...I can't stop Loving her Books!!!