旅に持っていく本
15年ぶりに、ヨーロッパへ一人旅に出た。
11時間のフライト、空港での待ち時間、列車の旅中、ホテルでの一人の夜。
時間がたっぷりあると考えて、本を3冊持って行った。
『ドリトル先生のアフリカいき』パウロ・コエーリョ作『アルケミスト』そして、英語版ムーミン谷の冬である『Moominland Midwinter』。
しかし、私が読み切れたのは、『ドリトル先生のアフリカいき』だけだった。
たっぷり時間はあったのに・・・
そして、当たり前のことを言うと、せっかく旅にきたのなら、列車の中で本を読むより車窓からの眺めを楽しみながら思いにひたるほうがその時間はときめく。
そして、旅の間は、読書にはそんなに集中できない。
という結論。
そんな話をすると、よくひとり旅に出るという友人(既婚男性)が、「わたしも旅に出る時は、重い本と軽い本の1冊ずつを持っていく」という。
まぁ、重い本は飛行機でまったく眠れないときに、ひたすら読む。それが読めなさそうなら、軽い本を気晴らしに読む、という。
やっぱりそうなんだ、旅人も。旅の間は軽い本の方が読めるだろうなって。
でもわたしはどこかヨーロッパに行くから、ちょっとカッコつけたかったのだ。だから外国文学を3冊選び、ドリトル先生のような冒険の話やら、友人が人生観が変わったというバイブル的な本だと絶賛する『アルケミスト』をわたしも特別な旅の最中に読みたかったし、北欧の地で本場のムーミンのおはなしを英語で読んでみたかった。ムーミンの本は日本で何度も頭に入らず挫折してきた一冊だ。
ここで読みやすい林真理子の小説なんかを持って行きたくなかった。日本のリアルな日常生活を彼女の小説は描いているわけなので、そんな本をわざわざ海外で読むなんて嫌だったのだ。
読書は、日常生活の中でするのが一番良いのかもしれない。日々の些事に追われながらも、読書をする時間はわたしに常に、新たな発見と教養と人生観を与えてくれるから。