かわべそうこのCurious Heart 

Writing about Books, Music,Movies,and Life so on.Everyday life is full of Curiosity!

『ちいさなちいさな王様』とひとりの女性の人生

本棚に忘れられたように並んでいた『ちいさなちいさな王様』を手にとった。日常の些事に疲れ気味だったわたしは、この小さな王様の表紙にたたずむ王様の絵にゆっくりとした時間を求めていたのだろう。

ちいさなちいさな王様

この本は、実はまだ最後まで読んでいなかった。2014年に通販でこの本を購入したら、本の帯に”STAP細胞作製に成功した小保方晴子さんが中学生の時に感銘を受けた本”と宣伝してあったのだ。手元に届いたとき、彼女は、STAP細胞の研究が世界的発見と称されて数か月で、一気に不正があったのではないかという疑惑へとひっくり返り大変な騒ぎの渦の中だったので、わたしはとてもいたたまれなくて、帯は捨て、本は本棚にしまってしまったのだ。

あれから4年過ぎ、わたしはこの本を読んでみようという気持ちになった。読んでいると、固定概念で成熟されつつある頭の固い大人になっちゃってる。ちょっと立ち止まって、ちいさな王様が実際に部屋の隅から出てくるのではないか、という想像力を取り戻せたらステキなのにな、と自分がちょっとばかり残念に思えた。小さな赤ちゃんで生まれて心も体も大きくなっていく私達は、実は大人になるにつれて夢や想像力は小さくなっている。

存在するのに存在しない。命の終わりは永遠の始まり、生まれた時に大きくて小さくなっていく。王様の言うことは、私達が当たり前だと思っていることと正反対なのだから、ん???と思考回路がいったん止まり、頭で、そしてこころで考えさせられる。なんというか、感覚的に。

この本は、読んでいるときに時間と空間がゆったりと別次元へふわっと移動したようで、不思議な物語だ。そして、読みながら、小保方さんがこの本が好きな理由がなんとなくわかった気になったり、彼女は今どうしているのだろうか、と思いを馳せてみたりして、彼女のこのことが気になった。

 

STAP細胞は本当にあるのかどうか、そんなサイエンスティックなことは謎に包まれている。ただ、私は、このちいさなちいさな王様を読みながら、小保方晴子さんという同じ年頃の女性の人生はなんと壮絶なものだろうか、と思わずにはいられない。自分が信じ続けていたものが、存在しない、”あれはあなたの思い違い”と”それは不正して作製したのだから、大罪だ”と切り捨てられたとき、彼女は、科学者として、一人の若い女性としてこの先どうやって生きていけるのだろうか。

ちいさな王様から小保方さんに想像を巡らせていると、ふと書店で手にした雑誌に、彼女の記事を見つけた。手記を出版したという。力強く、前向きに自分らしく生きていく、という強い意志で綴っていて、それなのに、以前にも増して美人になって雑誌に登場していた彼女に見入ってしまった。 

『ちいさなちいさな王様』という一冊の本から、ひとりの女性の人生に想いを馳せた。小保方晴子氏の手記も読んでみたい。